投資の民主化
より多くの場所、より多くの人々に繁栄を届ける
お客様もリーダーも、私が会話を交わした人、ほぼすべての人が、経済の将来に対して記憶にある限り今ほど不透明感を感じる時期はないと言います。不安に思うのも無理はありません。しかし私たち人類は過去に何度もこのような時期を乗り越えてきました。そして最後には何とか問題を解決します。
私たち人類は賢く回復力に長けた生き物です。自身のイメージを反映したシステム – すなわち周囲の混乱を観察してその意味を理解し、驚くほど優れた結果をもたらすシステムを構築します。コンピューターは人間の代わりに複雑なデータ(今は言語も)を処理します。都市は数百万人もの人々が隣り合って暮らし、普段は平和で、多くの場合において人々は生産的に生活しています。
しかし人類が創造したあらゆるシステムの中で最も強力で、現代に適したこの仕組みは、400年以上も前に始まりました。このシステムはとりわけ、豊かさにおける欠乏や繁栄における不安といった矛盾を克服するために発明されました。
私たちはこのシステムを資本市場と呼んでいます。
人類が創造したあらゆるシステムのなかで最も強力で、現代に適したこの仕組みは、400年以上も前に始まりました。資本市場と呼ばれているものです。
1602年に世界初の証券取引所がアムステルダムに開設されると、投資はより民主的な事業となりました。それまでは、投資ができるのは殆どが裕福な商人に限られていました。事実、アムステルダム証券取引所の最初の投資家1,143人のうち90%は裕福な人でした。しかし残りの投資家は一般市民で、職人が53人、商店主が8人、絹織り職人6人、石鹸製造者4人、質素な小屋の1年分の家賃を払えるだけの50ギルダーをそれぞれ投資した少なくとも2人のメイドが含まれていました1。
資本市場が厳格な階級制度とともに英仏海峡を渡って英国に上陸したときも、ロンドン証券取引所は宮殿には開設されませんでした。代わりに取引所が開かれたのは「チェンジ・アリー」のジョナサンズ・コーヒー・ショップでした。司教や書店主に混じって投資を行ったのは、家畜市場からブーツに泥をつけたまま直接駆けつけた農民でした。投機的な取引をする人もいましたが、多くは特に有望な事業であるイングランド銀行をはじめとする新規事業に投資をする人々でした。このとき初めて、普通の人々が周囲で起こっている経済の成長を傍観するだけの存在ではなくなりました。そうした経済成長の分け前を、現実の取引可能な株式として所有しました2。
それから4世紀が経過し、私たちの市場は裏通りのコーヒー・ショップから大きく進化を遂げました。ですが、「繁栄の弾み車」という市場の仕組みは基本的に今も変わっていません。つまり人々が自分の貯めたお金を投資し、市場がその資金を企業や産業に提供し、事業が成功したら得る利益を投資家に還元することで、人々が退職後の生活費や大学の学費、家の購入費用を賄うことを支援します。そして車輪は回り続けます。
私たちの世代に、市場参加者は爆発的に増加しました。20世紀前半には、株式を保有する米国人の割合は1%から4%へと小幅に増加したのみでした3。しかし私が長髪をなびかせ、ターコイズのジュエリーをつけ、世界で最も醜い茶色のスーツといういでたちでウォール街に初めて就職した1976年以降、投資は(ありがたいことに私も)はるかにファッショナブルに変化しました。1989年までは投資を行う米国人の世帯は全体の3分の1弱だったのに対し、現在では約60%に達しています4。
この時代の投資家は、人類史上における最高の資産形成の時代の恩恵を受けています。過去40年の世界の国内総生産(GDP)の伸びはそれ以前の過去2000年の合計を上回っています5。この目覚ましい成長は、歴史的な低金利に後押しされたことが要因の一つであることは注意すべき点ですが、並外れた長期的リターンを牽引してきました。しかし言うまでもなく、誰もがこの富を分かち合っているわけではありません。
図表1.1:6

The performance graph is not necessarily indicative of future investment performance.
この並外れた市場拡大の時代にはグローバル化も同時に進行し、グローバル化によって市場拡大が大きく前進しました。拡大しつつある世界で10億人の人々が1日当たり1ドルの貧困から脱出できた一方、富裕国では数百万人の人々がより良い生活を求めており、未だに取り残されたままとなっています。
今日、多くの国には正反対の二つの経済があります。一方は富を基盤に富が生み出される経済、そしてもう一方は苦難を基盤に苦難が形成される経済です。この分断は私たちの政治や政策、そして何ができるのかという感覚までも一変させました。保護主義が復活し力を持ってきています。こうした動きの背景には暗黙の前提があります。それは、資本主義はうまくいかなかった、今は何か新しいものを試すときだ、というものです。
ですが別の見方もあります。つまり、資本主義はうまくいったものの、あまりに少ない人々しかその恩恵を受けられなかったという見方です。
人間が構築するすべてのものがそうであるように、市場は完璧ではありません。市場は私たち人間を反映し、未完成で時には欠陥があるものの、常に改善は可能です。解決策は市場を放棄することではなく、市場を拡大し、400年前に始まった市場の民主化を完成させ、より多くの人々が成長の大きな分け前を得られるようにすることです。
- 以下、二つの方法により投資の民主化をさらに推進することについて、考えてみたいと思います。投資の民主化には、大きく分けて二つの方法があります:
- 今の投資家が、これまでアクセスが制限されていた市場にアクセスできるようにする。
- そもそも投資家になる人を増やす。
まずはブラックロックの取り組みから紹介しますが、これらの取り組みはいずれも資産運用にとどまらず、退職に関する政策、エネルギー、トークン化など、より広範な問題にまで及んでいます。
人間が構築するすべてのものがそうであるように、市場は完璧ではありません。市場は私たち人間を反映し、未完成で時には欠陥があるものの、常に改善は可能です。解決策は市場を放棄することではなく、市場を拡大することです。
投資を増やし、投資家を増やすこと。それが答えです。
ブラックロックはお客様のフィデューシャリーであり、世界最大規模の資産運用会社であることから、一部の読者は私が自分達のストーリーを語っていると思われるかもしれません。そう思われても仕方ありません。しかし、このストーリーは、ブラックロックが今日これほど大きくなってから語りだしたストーリーではありません。ずっと以前から、いわば創業以来変わらず、より良い投資を行えば、より良い暮らしを送ることができるという信念を持っています。それこそがブラックロックを創設した理由です。
プライベート市場を開放する
ブラックロックの過去14カ月間と、これからの未来
経済は資本で動いています。17世紀の貿易船隊であれ、21世紀のデータ・センターであれ、建てるためにはどこからか資金を調達する必要があります。しかし過去においてその役割を担ったのは投資家ではありませんでした。アムステルダムから英国のチェンジ・アリー、さらにはニューヨーク証券取引所(NYSE)まで、400年の金融イノベーションの歴史にもかかわらず、資金の大半を提供してきたのは資本市場ではなく、銀行や企業、政府でした。
なぜ銀行や企業、政府なのでしょうか。それは人々がこれらの組織にお金を払ったり預けたりするからです。人々は貯めたお金を銀行口座に預け、消費を通じて企業の成長を牽引し、財政支出の原資となる税金を収めました。
しかし私が1988年にパートナーと共同でブラックロックを設立したとき、世界は変わる、と私たちは確信しました。資本市場は銀行や企業、政府を補完するだけでなく、それらに匹敵して肩を並べる存在になるはずだと。
世界は変わる、と私たちは確信しました。資本市場は銀行や企業、政府を補完するだけでなく、それらに匹敵して肩を並べる存在になるはずだと。
そのロジックは簡単です。市場は銀行や企業、政府より高いリターンを提供します。リターンが高ければ、より多くの投資家を惹きつけます。投資家が増えれば、市場は厚みを増します。市場の厚みが増せば、より多くの資金が市場に流入します。更に、資産運用会社はイノベーションを通じてこの変化を加速させました。ブラックロックは、優れたリスク・マネジメント開発からスタートし、それからETFなどの商品を通じて投資コストを引き下げました。
この37年間、私たちは幸運でした。我々が考えたような展開で進んだからです。しかし今はっきりと分かることは、市場拡大のストーリーはまだ初期段階であるということです。本当の成果が現れるのはこれからです。
21世紀も4分の1が過ぎた今、投資需要と、従来の資金源から調達可能な資金額とのミスマッチは拡大しつつあります。
政府は赤字を増やすことによってインフラ費用を捻出することはできません。これ以上大幅に赤字を拡大するわけにはいかないからです。代わりに政府は民間投資家の資金を頼りにしています。
一方で企業は、銀行融資だけに頼ることはなくなります。銀行融資には制約があるため、企業は代わりに市場で資金を調達しようとするでしょう。
市場には既に資金があります。事実、現在の市場の待機資金は、私がこの仕事を始めて以来最多となっています。米国だけでも約25兆米ドルが銀行やマネー・マーケット・ファンド(MMF)に滞留しています7。
しかし、私たちは金融史の初期の過ちを繰り返しています。豊富な資金を、あまりにも少数の対象に注ぎ込むという過ちです。ある歴史家は、投資家にもっと多くの投資先企業があれば、世界初のアムステルダム証券取引所は「経済にはるかに多くの貢献をしていただろう」と述べています。現在にもそれは当てはまります8。
データ・センター、港湾、送電線網、急成長を遂げている世界の非上場企業など、未来を決定づける資産にほとんどの投資家は投資することができません。それらは高い壁で守られたプライベート市場で取引され、超富裕層か最大規模の投資を行う市場参加者にしか門戸が開かれていません。
プライベート市場が排他的である理由は常にリスクが高く、流動性が低く、複雑であることです。そのため、特定の投資家しか参入が認められていません。しかし、金融に変えられないものはありません。プライベート市場を高リスクのままにしておく必要はありません。透明性が低く、アクセス不可能のままにしておく必要もありません。投資に関わる業界が積極的にイノベーションを起こそうとするならば、それを変えることは可能ですし、それこそまさにブラックロックがこの1年間を費やして尽力してきたことです。
ブラックロックはこれまでもプライベート市場においても活動してきました。それでも、ブラックロックはなによりもまず伝統的資産の運用会社でした。2024年の初めまでは。しかし、現在は違います。
ブラックロックはこの14カ月間にプライベート市場で最も急速に成長しているセクター、インフラストラクチャーとプライベート・クレジットで二つのトップ企業の買収を発表しました。さらに、より優れたデータと分析からポートフォリオ全体のリスクを測定し、機会を捉えることによって、市場へのアクセスの促進を可能にすべくもう一つ企業を買収しました。
ブラックロックは変革を遂げています。次のセクションではこの変革に踏み切った理由、その方法、それが重要である理由について詳しく説明いたします。
ブラックロックはこれまでもプライベート市場に投資してきました。それでも、ブラックロックはなによりもまず伝統的資産の運用会社でした。2024年の初めまでは。しかし、現在は違います。
68兆米ドルの投資ブーム:誰がそれを行うのか
歴史を通じて、インフラは経済成長を牽引する上で驚くほど大きな役割を果たしてきました。1860年から1890年の間に、鉄道の建設だけで米国の国内総生産(GDP)を約25%押し上げました9。その1世紀後にはハイウェイの建設が似たような役割を果たしました。ある計算によれば、1950年から1989年までの間には、インターステート・ハイウェイに対する投資が生産性向上分の約4分の1を占めていました10。
今日、私たちの目の前には膨大な機会があり、全容を把握するのは困難なほどです。2040年までに世界の新たなインフラ投資需要は68兆米ドルに達します11。この費用を別の角度から見ると、今後15年の間6週間ごとにインターステート・ハイウェイと大陸横断鉄道の全体を起点から終点まで建造し直す費用にほぼ等しい金額となります12。
図表2.1 :13

私はこの1年間、既に歴史的な赤字に悩まされている政府が、債務スパイラルに陥るリスクを負うことなく、新規インフラの莫大なコストを納税者だけに負わせることは不可能だと主張してきました。しかし制約に直面しているのは政府だけではありません。世界の最大手のテクノロジー企業でさえ、数十億米ドルものフリーキャッシュフローはあるものの、これほどの規模の投資を行えるだけの資金は持ち合わせていません。AIデータ・センターを一基建設する為に400億~500億米ドルかかる場合があります14。
テック企業のリーダー達と話をすると、彼らは、自社が最も得意とすることに集中したいのだ、と言います。それは、画期的な技術を発明することであって、その技術を実装するのに必要な大規模なインフラをファイナンスすることではないのだ、と。
市場は、政府や企業が手を引きつつあるところへの参入を望んでいます。投資家はすでに投資行動によってその意向を示しつつあり、インフラは世界で最も成長著しい市場セグメントの一つとなっています。しかし、市場構造のためにこの投資は抑制されています。
プライベート市場は閉鎖的な市場
ほとんどの人は「市場」と聞くと、株式、債券、コモディティを取引するパブリック市場(公開市場)を思い浮かべます。しかし新しい高速鉄道や次世代送電線網の株式をロンドンやニューヨーク証券取引所で買うことはできません。その代わりにインフラ・プロジェクトへの投資を行えるのは主にプライベート市場のみです。
プライベート市場はその名が示す通り閉鎖的な市場です。個人投資家の場合、最低投資額が高く設定されていることが多く、また、最低投資額がそれほど高額でなくても、ほとんどの場合、投資は一定の収入や資産を保有する人に限られます。
こうした現象は世界の大多数の企業にも同様にあります。上場企業はごく一部であり、しかもその割合は減少しつつあります。ブラックロックが25年前にたどった道、つまりIPOを通じた資金調達はますます珍しくなっています。米国では収益が1億米ドルを超える企業の81%が非上場企業です。この数字は欧州では米国より高く、英国ではさらにそれを上回ります。
とは言え、これらの企業もやはりイノベーションと成長のための資金を必要としています。家計が金融機関から住宅ローンを借りるように、彼らは何十年もの間、銀行から資金を調達してきました。しかしその時代は急速に終わりを告げようとしています。今日、銀行だけでは成長企業の資本需要を賄えるだけの十分な資金を提供することはできません。
図表2.2 15

プライベート・クレジットがその隙間を埋めるべく参入しています。実際にプライベート・クレジットの運用残高は2020年代の終わり頃までには2倍超に増加すると予想されています16。しかしインフラと同様、ほとんどの個人投資家はこの成長に参加することができません。大手の機関投資家でさえ、これらの資産を思い通りに配分するポートフォリオを構築するのは難しいのです。
60/40から50/30/20へ
プライベート市場に投資することの利点は特定の橋やトンネル、中規模企業を所有することではなく、これらの資産が株式や債券への投資と補完関係にある事、すなわち分散化にあります。
分散化は「唯一のフリーランチ(リスクを増やさずリターンを上げる戦略)」と言われています。ノーベル賞を受賞した経済学者であるハリー・マーコウイッツ氏やウィリアム・シャープ 氏が現代ポートフォリオ理論を開発する際に提唱した画期的な考え方で、株式を約60%、債券を40%組み入れる今日の標準的なポートフォリオ構築の基盤となりました。投資家は何世代にもわたり、このアプローチに従い、個別銘柄ではなく、市場全体を対象としたポートフォリオ・ミックスを保有することで利益を上げてきました。しかし世界の金融システムの進化が進む中で、伝統的な60/40のポートフォリオ戦略はもはや本来の意味で分散の機能を果たせなくなってきています。
今後の標準的なポートフォリオは50/30/20の割合で、株式と債券に加えて、不動産、インフラ、プライベート・クレジットなどのプライベート資産を組み入れたものになると思われます。
その魅力は明らかです。プライベート資産はより大きなリスクを伴いますが、以下の効果をもたらします。
1. インフレに対する防衛 — 通行料や電気料金など、インフラが生み出す収入は通常、インフレとともに上昇します。
2. 安定性 — パブリック市場とは異なり、インフラのリターンは変動が非常に少ない傾向にあります17。
3. リターン — 過去の実績を見ると、インフラをほんの10%加えるだけで、ポートフォリオの全体的なリターンが押し上げられます18。
図表2.3 19

Past performance is not indicative of current or future results
今後の標準的なポートフォリオは50/30/20の割合で、株式と債券に加えて、不動産、インフラ、プライベート・クレジットなどのプライベート資産を組み入れたものになると思われます。
しかし問題は、資産運用業界の構造が50/30/20になっていないことです。業界は、50/30の部分(株式と債券)だけにフォーカスする伝統的な資産運用会社と20(プライベート資産)の部分に特化するプライベート・アセットの運用会社に分断されています。
ほとんどの投資家にとって50/30と20との分断を埋めることはほぼ不可能です。例えできたとしても、20%の中での分散化で新たにもう一つ問題が生じます。多くの場合、こうした投資家は、一つのプライベート・ファンドの最低投資額をかろうじて超えるくらいの資金配分しかできません。しかし、ポートフォリオの20%を一つのファンドだけに配分するポートフォリオは真に分散化されているとは言えません。
私たちは投資家の皆様がより良い結果を得られるようお手伝いします。パブリック市場とプライベート市場の分断は難しい問題ですが、解決策はあります。事実、ブラックロックは以前に似たような市場の問題に直面し、解決したことがあります。
パブリック市場対プライベート市場の前にはインデックス投資対アクティブ投資がありました
ブラックロックは2009年にバークレイズ・グローバル・インベスターズ(BGI) を買収しました。同社は世界トップクラスの上場投資信託(ETF)事業であるiシェアーズ(iShares)を立ち上げていました20。当時はほとんどの人々がこの買収をただのETFへの賭けと考えていましたが、実際はもっと大きな狙いがあったのです。
当時、投資の世界は2つに分かれていました。
- ひとつはインデックス・ファンドで、BGIが提供していたETFのような、低コストで、ルールに従ってポートフォリオを構築し、S&P 500のような指数の動きに連動します。
- もうひとつはアクティブ投資であり、ポートフォリオ・マネージャーが市場を上回るリターンを目指して運用します。
業界はどちらか一つを選ばなくてはならないかのような、つまりこれら二つのアプローチが互いを排除するものであるかのような行動を見せていました。ブラックロックがBGIを買収したのは、そうではないのだという確信に基づいたものでした。
ブラックロックは、たとえインデックス・ファンドを選択するだけだとしても、投資行動に関するすべての決定はアクティブなのであると考えていました。市場には大型株バリュー、大型株グロース、株式市場全体、エマージング市場、エネルギー銘柄、金融商品、ブラジル小型株のインデックス・ファンドなどがあり、そしてその他にもありとあらゆる銘柄のインデックスが存在します。そしてこれらの中から選択するには投資銘柄の適切な組み合わせや引き受けられるリスクの程度、そのリスク・マネージメントなど、重要な決定を行う必要があります。
ブラックロックはアクティブ戦略とパッシブ戦略を一つのポートフォリオ内で組み合わせることで、投資家の皆様に、複数の戦略をシームレスに組み合わせる自由という、これまでまったくなかったものを提供しました。ETFはもはや純然たるパッシブ運用商品ではなくなったのです。その代わり、ETFはアクティブ・ファンドかインデックス・ファンドか、両方の組み合わせかという、あらゆる種類のポートフォリオの構築に欠かせない重要な構成要素(ビルディングブロック)となり、さらに分散投資が容易になり、手数料も下がりました。事実、2015年以降、ブラックロックのETFは、お客様が支払う手数料を6億4,200万米ドル削減しました21。このようにして退職後の資金を貯蓄している個人投資家でも、数十億米ドルを運用する大手機関投資家でも、投資家の皆様には、多くの分散化メリットと、コスト削減をもたらしました。そしてこれが最も重要な点ですが、ようやく、お客様がご自身の資金をもっと管理できるようになったのです。
今後の標準的なポートフォリオは50/30/20の割合で、株式と債券に加えて、不動産、インフラ、プライベート・クレジットなどのプライベート資産を組み入れたものになると思われます。
GIPとインフラストラクチャーの機会
GIPは、ロンドンのガトウィック空港や主要なエネルギー・パイプライン、世界の40超のデータ・センターといった、世界で最も重要なインフラ資産のいくつかをお客様に代わり所有しています。同社は世界の最も魅力的なインフラ投資案件を発掘し、その建設または改装のための資金を調達することを専門としています。つまり、ブラックロックのお客様は GIPを通じて、データ・センターなど68兆米ドルにのぼる過熱するインフラストラクチャー投資に直接アクセスできるのです。
エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は先ごろこう述べています。「エヌビディアは現在、必要と見込まれる数兆米ドルのAIインフラのうち1,500億米ドルの事業に取り組んでいます。そのためにブラックロックとパートナーシップを締結しています22。」このパートナーシップにはxAI、マイクロソフト、MGXが参加していますが、最も重要な点はブラックロックのお客様が含まれていることです23。今世紀の決定的なテクノロジーの隆盛を加速させ、リターンを生み出すのはそうしたお客様の資金です。GIPを通じてすべてが可能になります。
今月の画期的な港湾に関する発表についても、同様です。この基本合意は、23カ国にまたがる43の港湾ネットワークをカバーしています。これは、世界を移動しているコンテナ20個のうち約1個は毎年これらの港を経由していることになる計算です24。
私たちのパートナーには、海運とロジスティクスの世界的リーダーであるメディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)と、世界最大級のグローバル・コンテナ・ターミナル・オペレーターであるターミナル・インベストメント・リミテッド (TiL)が含まれています。この取引が完了すれば、私たちのコンソーシアムは世界中の約100港のポートフォリオを持つことになります。パートナーシップを結ぶことで私たちは、資産への投資、所有、運営これらすべての専門的領域をカバーします。事実、GIPはインフラの効率化に関する専門家です。同社はガトウィック空港を取得した際に、特大の手荷物トレーを導入するといった極めて簡単な解決策を用いて、保安検査の時間を半分に短縮しました。その結果、旅行者が買い物や食事をする時間は増え、空港の収益が増加しました。つまり、私たちはお客様により多くのインフラを提供するだけでなく、良いインフラを提供して、更にそれをより良くしているのです。25
HPSとプレキン、そしてプライベート市場が必ずしも不透明な市場ではなくなる理由
GIPの買収を完了しようとしていた同じ頃、ブラックロックは他の2件の大型買収案件も進めていました。2024年夏の初めに、プライベート市場の業界においてデータプロバイダー大手であるプレキンの買収を発表しました。さらに年末にはプライベート・クレジット・プロバイダーの業界トップであるHPSインベストメント・パートナーズの買収計画を発表しました。
これらの買収によって、ブラックロックのお客様は世界のプライベート市場にもっと直接アクセスできるようになります。すると、世界中の企業に資金が提供され、消費者経済はまわり続けます。しかし、買収の背景にはもっと深い、長期的な戦略的思惑もありました。
何十年もの間、プライベート市場は金融市場の中で最も不透明な部分の一つでした。投資家は、プライベート資産には長期的な価値があることを知ってはいるものの、正確にどれだけの価値があるかは把握していません。価値を判断することは必ずしも容易ではないのです。
不動産に例えると分かりやすいでしょう。家を買う場合、適正な価格を払っているかどうか知りたいと考えた時、その手段があります。近隣の基準価格や最近の販売事例、過去の価格上昇トレンドを確認することができます。米国では不動産情報サイトを運営する Zillowのおかげで、この作業は簡単になりました。しかし今日プライベート市場に投資することは、Zillowが登場する前に、適正価格を見極めることが困難または不可能な、馴染みのない地域で家を買うようなものに思えます。この透明性の欠如が投資意欲を削いでいます。
ブラックロックによる買収には、こうした状況を変える狙いがあります。例えば、プレキンはプライベート市場に関する業界で最も包括的なデータを提供しています。同社は19万超のファンドと6万超のマネージャーをカバーしています。この豊富なデータ・セットのおかげで、すべてのマネージャーやファンドのパフォーマンスを明確に把握できるほか、それらが保有する資産の相対的なバリュエーションも知ることができます。言い換えれば、プレキンは実質的に、住宅に対するZillowの役割であったり、または金融セクターで言えば株式や債券に関するブルームバーグ端末の役割を、プライベート市場に関して果たしています。
ただし、このビジョンはそれで終わりではありません。
より明確なリアルタイムのデータがあれば、パブリック市場の代表指標であるS&P 500のようにプライベート市場をインデックス化することが可能になります。そうなれば、プライベート市場は売買や追跡がしやすいシンプルな市場になると思われます。それは、資金が経済全体をより自由に循環するようになるということです。繁栄の弾み車は勢いを増し、世界経済や大手機関投資家だけでなく、世界中のあらゆる規模の投資家の成長を促進すると思われます。
より明確なリアルタイムのデータがあれば、パブリック市場の代表指標であるS&P 500のようにプライベート市場をインデックス化することが可能になります。そうなれば、プライベート市場は売買や追跡がしやすいシンプルな市場になると思われます。
投資の新時代
ある意味、今は、ブラックロックの創業時と同じような気がします。
1988年に、ブラックロックの最初の従業員であった故チャールズ・ハラックが – 彼の不在はとても寂しいものですが- 1台のコンピューターを購入しました。価格は2万5,000米ドルで、洗濯機と同じくらいの大きさがありました。彼はそれを冷蔵庫とコーヒーメーカーの間に置き、資産運用リスク・マネジメント・システムであるアラディン(Aladdin)を構築しました。このソフトウェアはそれまでなかったもの―ポートフォリオのリスクを一目で明確に把握できる仕組みを投資家に提供し、投資のあり方を根本から塗り替えました。

アラディン(Aladdin)の開発者、チャールズ「チャー リー」ハラック(1964~2015年)
この37年間を振り返ると、ブラックロックの創業は会社の始まりというだけでなく、業界全体に変革をもたらすものでもありました。今から数十年後、我々は、金融界に再び変化が起きた新たな転換点として2025年を振り返るかもしれません。
しかし、こうした将来は資産運用会社だけによって形作られるわけではありません。市場は、それ単独で存在するのではありません。誰が恩恵を受け、経済的繁栄がどのように広範に拡大するのかについては、選択される経済ルール、採用される投資政策、そして各国が海外から資金を呼び込み投じる方法により変わってきます。
次は、この課題について取り上げます。まず、多くの人が経済的に不自由のない安心できる退職後の生活を過ごしたいと考えていることについて取り上げます。
リタイアメントからトークン化まで
私たち全員がどのように投資を民主化できるか
大恐慌真っただ中の1933年9月30日、カリフォルニア州の小規模新聞社が発行する『ザ・ロングビーチ・テレグラム』は、フランシス・タウンゼント氏の投書を掲載しました。彼は地元の医師で、年配の女性が道端で食べ物をあさっている悲惨な状況を目の当たりにした怒りから自身の意見を投稿しました。60歳以上のすべての米国民に月額200米ドルを支給するという彼の提案は、米国内のソーシャル・セキュリティの整備につながる運動を引き起こしました26。
米国国勢調査局によれば、ソーシャル・セキュリティのおかげで、毎年、約3,000万人の米国民が貧困に陥らずに済んでいます27。これは、並外れた功績です。しかし、ソーシャル・セキュリティの退職基金と身体障害者基金は2035年までに枯渇すると予想されています。当該基金が枯渇すれば、人々は約束された給付額の83%しか貰えなくなり、その額は時間の経過とともにさらに少なくなると考えられています28。
しかし、仮にソーシャル・セキュリティの強化が図られたとしても、十分ではありません。ソーシャル・セキュリティは、フランシス・タウンゼント氏が念頭に置いた内容(すなわち、年配者を貧困に陥らせないこと)を厳密に実行するよう設計されました。けれども、貧困を逃れても、経済的な安定が得られるということにはなりません。そのため、今日、ソーシャル・セキュリティの約束があるにもかかわらず、依然として米国民の半数以上は、自身の死よりも貯蓄で賄える期間を超えて長生きしてしまうリスクのほうを恐れています29。
優れた退職年金制度は、人々が下に落ちないようにするためのセーフティー・ネットを提供します。しかし、偉大な制度は、上に登るためのはしご-毎年毎年、資産を複利運用して貯蓄を増やす方法も提供します。それこそが米国で必要な制度なのです。現在、米国は、当然のこととして、人々が貧困に陥いるのを阻止する取り組みに重点を置いています。しかし、米国は、それと同じぐらい、人々が投資を通じて豊かになる手助けをする取り組みにも注力する必要があります。
ブラックロックが運用する資金の半分以上は退職のための資金です30。それはブラックロックのコア・ビジネスですが、このことは、大半の人々にとって、退職資金口座が最初の、そして多くの場合唯一の投資の経験となることからも、理にかなっています。したがって、投資を本当に民主化したいと考えた場合、退職(リタイアメント)が対話の開始地点となるのです。
Redefining retirement – it’s all of our work, BlackRock 2025 survey
優れた退職年金制度は、人々が下に落ちないようにするためのセーフティー・ネットを提供します。しかし、偉大な制度は、上に登るためのはしご-毎年毎年、資産を複利運用して貯蓄を増やす方法も提供します。
ブラックロックは世界中の人々が退職後の生活のために投資を行えるよう支援していますが、本セクションでは米国に焦点を当てたいと思います。なぜなら、状況が切迫しているからです。公的年金は巨額の資金不足に直面しています。全米のデータによれば、公的年金のファンディングは必要額のわずかおよそ80%にしかなりません。そして、これはかなり楽観的な数値である可能性すらあります31。一方で、米国民の3人に1人は退職後の蓄えを一切有しておらず、年金にも、401(k)にも加入していません。何もないのです32。
資金不足が拡大していますが、寿命は長寿化しています。今日、結婚していて、二人とも65歳まで生きれば、少なくともどちらかが90歳まで生きる確率は50%です33。また、GLP-1受容体作動薬などの生物医学上のブレークスルーにより、さらに多くの慢性疾患は、近い将来、治療できるようになる可能性もあります。
それは大変素晴らしいことですが、同時に厄介な状況も浮き彫りにします。つまり、人々の寿命は大幅に伸びますが、伸びた年数分の資金を手当てするための取り組みはほとんど行われていないのです。
最も心配すべきことは、この問題について議論をしていないということです。その意味では、私は米国の退職後の生活の危機について一ヶ月前ほど心配をしていません。
3月に、ブラックロックは、ワシントンD.C.でリタイアメントに関するサミットを開催し、共和党議員、民主党議員、資産運用会社、年金基金、中小企業経営者、消防士、教師、労働組合員、農業従事者などが一堂に会しました。重要なのは、多様なメンバーが参加したことです。優れたアイデアは、予期せぬところから生まれるものです。米国史上最も重要な退職プログラムは小規模新聞紙上の無名医師からの投書がきっかけでした。
本サミットでは当時と同じく活発な議論が交わされました。私たちは、より多くの米国民が投資を開始し、リタイアメントの目標に向けて貯蓄をし、その老後資金を不安なく使うことで、死そのものを恐れること以上に資金不足を恐れる必要がなくなるための実践的なアイデアについてコンセンサスを得ました。

向かって左から右:James Slevin氏(ニューヨーク市消防局消防士、国際消防士連合第1地区バイス・プレジデント)、Michelle Crowley氏(元ビロクシ消防局消防士)、Shebah Carfagna氏(Panache Wellness and Fitnessのオーナー)、Nate Wilkins氏(Ageless Workout Methodの創業者)、Gayle King氏(議長、 CBS Mornings & Editor-at-Large, Oprah Dailyの共同司会者)
どこで開始するか
本サミットの中の一つのパネルに登場した一人の消防士が、新人だった頃に、どのようにして年金にそれとも知らず加入したのかという記憶を語ってくれました。ある先輩消防士が書式を彼に手渡して、「それにサインしろ。25年後、君は私に感謝することになる。」と言ったのです。そして、彼は実際その先輩消防士に感謝することになったのです。
すべての米国民がそのように簡単に投資を開始できるようにするべきです。しかし、数百万人の米国民にとって、投資は依然として選択肢ですらありません。
こうした状況を解決できるようになる三つの方法があります。
第1に、緊急用貯蓄を拡大することです。明日起きるかもしれないタイヤのパンクや救急外来に係る支払いを心配している人で引退生活のために投資を行う人はいません。それが現実なのです。米国有権者の3人に1人は、予期せぬ500米ドルの支出が発生しても対処できないと述べています34。
これを解決するにはどうすればいいのでしょうか。ブラックロックの慈善基金は、非営利団体と共同で緊急用貯蓄イニシアチブを設立し、主に低所得の米国民を対象にした「緊急用貯蓄口座」35に20億米ドルを蓄える支援を行っています。こうした専用の緊急用資金を持つ人は退職後の生活のために投資をする可能性がより一層高く、-ある研究によれば70%高いことが分かっています36。
米国議会は2022年に第2次退職貯蓄制度強化法(SECURE Act 2.0)を可決してこのアイデアを全米に拡張しました。同法により、労働者はリタイアメント・プランに関連づけられた緊急用口座に最大2,500米ドルを貯蓄できるようになりました。また同法には雇用主のマッチング拠出や、引き出し手順の簡略化も盛り込まれました37。ですがこれは手始めに過ぎません。規則を一段と簡略化し、拠出限度額を引き上げ、個別の緊急用口座への自動的な加入を可能にすることができます。
第2に、中小企業の401(k)の穴を埋めることです。米国民の半数は、中小企業で働いていますが、中小企業の半数近くは未だにリタイアメント・プランを導入していません38。これは解決可能です。インセンティブの実証実験を行っている州では、401(k)の採用-そして従業員の貯蓄が促進されています。政策当局者は、この点にさらに注力し、中小企業が制度を導入して労働者を自動加入させるのを支援することができます。
第3に、人々が早期に投資を開始できるよう支援することです。ブラックロックのリタイアメントに関するサミットで、上院議員のコーリー・ブッカー氏(民主党、ニュージャージー州選出)とトッド・ヤング氏(共和党、インディアナ州選出)は、資本市場用を活用した「ベビーボンド」について議論しました。このアイデアは、米国民のすべての子どもに対して出生時に投資口座を開設するというものです。ブッカー上院議員は、主に富裕層が恩恵を受けている既存の減税額の一部を、投資口座の元手として振り向けることができると述べました。これは興味深いコンセプトです。ごく少額であっても複利運用によって生涯を通じて結構な額のポートフォリオに成長する可能性があります。
すべての米国民がそのように簡単に投資を開始できるようにするべきです。しかし、数百万人の米国民にとって、投資は依然として選択肢ですらありません。

向かって左から右:コーリー・ブッカー上院議員(民主党、ニュージャージー州選出)、トッド・ヤング上院議員(共和党、インディアナ州選出)、Shair Akabas氏(超党派政策センター)
州政府と連邦政府双方のレベルで多くの政策当局者が長年にわたりこれに類する制度を提案してきました。私はこのアイデアはさらに検討する価値があると思っています。実際の成果は単に経済的なものにとどまらず、社会の基盤を成すものです。経済の一部分を所有するということは、単に経済成長から利益を得るだけでなく、経済の成長を信じていることです。当事者意識を持つことで、人は社会との繋がりを持ちます。このようにして、人は受け身の傍観者から参加者へと変化します。
今日生まれた子どもの個人的な資産が米国の経済成長と足並みを揃えて増えていく状況を想像してみてください。それこそが経済民主主義の姿なのです。すべての国民が、投資という幸福と経済的自由を追求する手段を持つのです。
それこそが経済民主主義の姿なのです。すべての国民が、投資という幸福と経済的自由を追求する手段を持つのです。
208万9,000米ドルをどうやって確保するか
人々がリタイアメントのための投資を始めたら、我々が目指すことはシンプルです。資産をできるだけ多く、できるだけ早く増やすことです。
1月にブラックロックは米国の人を対象にアンケート調査を実施し、快適な退職後の生活を送るために必要な金額はいくらか尋ねました。回答の平均金額は200万米ドル強、正確には208万9,000米ドルでした。これはかなりの金額です。予想していたよりも高い金額でした。そして、ほとんどの人はそれに近い金額に達していません。1番年上の層が5年後に退職年齢を迎えるジェネレーションX世代も例外ではありません。実際のところ、62%の人々は貯蓄が15万米ドルにも満たない状況です39。
我々にはポートフォリオ資産を増やすための、もっと良い方法が必要です。不動産やインフラといったプライベート資産がリターンを押し上げ、市場の下落局面で投資家を守ってくれる可能性があることはすでに述べました。年金基金は何十年もこれらの資産に投資してきましたが、401(k)はそうではありません。これは年金が毎年、一般的な401(k)を約0.5%アウトパフォームする理由の一つです40。
0.5%という数字は大きくありませんが、時間とともにその差は積み上がります。ブラックロックの推定では、年率リターンが0.5%上昇するだけで、投資した401(k)の残高は40年間で14.5%増加します。これは引退を9年間前倒しするのに十分な金額です。見方を変えると、プライベート資産に投資すれば孫と遊んで過ごせる時間が9年間増える可能性があります41。
プライベート資産のパフォーマンスがそれほど良いのであれば、401(k)口座が投資していないのはなぜでしょうか。その主な理由の一つは、プランで提供する投資を選択する401(k)プラン提供者にとって、プライベート資産は馴染みのない分野であることです。
例えば橋のようなプライベート資産に投資する場合、その資産価値は毎日は更新されず、望むときにいつでもお金を引き出すことはできません。結局のところ、それは橋であって、株式ではないのです。先述したように、ブラックロックはこれらの資産について価格の透明性を高め、流動性を高める努力をしていますが、多くの401(k)プランの提供者はこの金融情勢の進化にまだ適応できていません。実際、401(k)に対する不動産やインフラなどの資産の組み入れが現実的になったのは、ここ5年から10年の間のことです。
これは複雑な問題であり、明確にする必要があります。資産運用会社、プライベート市場の専門家、コンサルタント、アドバイザーは、すべて、401(k)プランの提供者を導く役割を担っています。この書簡を書いている理由はこの霧を晴らすためでもあります。我々がはっきりさせておきたいのは、退職口座におけるプライベート資産は適法であり、有益であり、そして透明性が高まっているということです。
ターゲット・デート・ファンドは端緒を開くには最適な対象です。人々はそのシンプルさを好んでいます。2040年、2055年、2060年など、退職予定年を選び、後はファンドに任せるだけです。そのシンプルさから、ターゲット・デート・ファンドは、プライベート資産の導入には理想的です。数十年にわたって投資を行う場合、日々の評価や即時の流動性など、401(k)プラン提供者がしばしば懸念する点はほとんど問題になりません。
見方を変えると、プライベート資産に投資すれば孫と遊んで過ごせる時間が9年間増える可能性があります
人々が貯蓄した資金を使うことに対し、我々はどのように支援できるか
蓄えを築くことは課題の半分に過ぎません。特に401(k)の利用者にとって、それをどう使うかを知ることが同様に重要です。
多くの年金受給者はこの点を心配する必要はありません。というのは安定した給与のように収入を毎月、受け取るからです。一方、401(k)には使用説明書がありません。残りの人生がどれくらいの期間になるか分からない中で、退職時に一括で受け取った資金で退職後をやりくりしなければならないのです。
その結果、老後の蓄えを十分に持っている退職者でも、蓄えが底をつくのではないかという不安に駆られ、支出を過度に控える傾向があります。一部の夢をあきらめ、楽しみを先延ばしにしています。エコノミストのウィリアム・シャープ氏は、この問題を「経済学の最も厄介で、最も難しい問題」と呼びました。難しい課題ではありますが、解決は可能です。
ブラックロックは昨年、こうした懸念への対処に特化したライフパス・ペイチェックを導入しました。これにより、401(k)の退職後の蓄えを安定した信頼性の高い毎月の収入に転換し、退職者が安心して蓄えを取り崩す選択をすることができるようになります。わずか12カ月間でライフパス・ペイチェックはすでに20万人の個人の退職金運用者を擁する六つのプランスポンサーにご採用いただいています。
誰が勝者という訳ではありません。ジェネレーションX世代の最年長層が退職期を迎え始めるにつれて、この問題はさらに深刻で厄介になるばかりでしょう。ジェネレーションX世代は主に401(k)を頼りにしている最初の世代です。そして、ミレニアル世代やZ世代でも401(k)を利用する傾向が広がっています。雇用者は蓄えを予測可能な収入に転換するソリューションを提供する必要があります。これによってすべての米国人は安心してリタイアメントを迎えることができます。
送電線の敷設に13年かかるなら、投資の民主化は不可能
米国では、株式市場に流入する資金の約30%が退職後のための投資です42。これは、経済の拡大とともにより多くの人が豊かになることを支援する最大の機会です。しかし、退職に向けた投資が市場のすべてではないのと同様に、これが唯一の解決策ではありません。
例えば、退職後の投資家にインフラへのアクセスを提供しても、インフラが建設されないのであればあまり意味がありません。今はそのような場合がよくあります。
米国でも欧州でも、通常、インフラ・プロジェクトの許認可取得には建設期間を上回る時間がかかります。高圧送電線の許認可では取得まで13年かかる場合がありますが、中国ではそれを4分の1の時間で行っています43。
エズラ・クライン氏とデレック・トンプソン氏は、新著『Abundance(豊かな社会へ)』でこの厄介な許可手続きを巧みに説明しています。特に印象的な一節では、カリフォルニアの停滞する新幹線プロジェクトを歴史的な文脈の中で触れています。
「カリフォルニア州は……1860年代に、数百マイルを除き、大陸横断鉄道の西部区間を建設しました。このプロジェクトはほぼ1,800マイルにわたるものでした。わずか6年で完成しました。今日では、6年という歳月は、カリフォルニア州が、自州の新幹線計画をさらに10年延期する必要があると認識するまでに必要とした、おおよその期間です。カリフォルニア州が500マイルの高速鉄道網を完成できなかった期間に、中国は23,000マイル超の高速鉄道を建設しました。」
しかし、両氏は、「良くても混乱を招き、最悪の場合は壊滅的な結果をもたらす可能性がある」のは、エネルギーインフラの遅れだと記しています44。
世界の電力需要は急増していますが、その要因の一つはAIの台頭です。1カ所のデータ・センターで1ギガワットの電力を消費することもあります。これはホノルル市全体における真夏の最も暑い日の電力消費量に相当します45。ユタ州、オハイオ州、テキサス州では、既に、電力会社が、AIによって押し上げられた電力需要が送電網のキャパシティを超える可能性があると警告しています。シリコン・バレー・パワーでさえ、新規のデータセンターへの電力供給の要請の受理を停止しています46。
発電と送電、そしてそれらを建設する電気技師やエンジニアたちに大型投資を行わなければ、人間と機械のどちらに電力を供給するかという受け入れ難いトレードオフに直面することになりかねません。サーバーを冷却する方を選択し、人間はうだるような暑さや凍えに耐えるような社会は根本的に優先順位を誤っています。
エネルギー・プラグマティズム(実利主義)が必要です。何よりもまず、米国と欧州において、緩慢で、崩壊寸前の許認可手続きを修正することから始めなければなりません。それはエネルギー・ミックスについて明確な見通しを持つことでもあります。
新規のインフラ投資は大半が再生可能エネルギーを対象としていますが、蓄電技術が飛躍的に進歩しない限り、風力や太陽光だけで電力を確実に供給することはできません。当面、データ・センター向け電力の半分以上は需給調整が可能な電源を使用しなければならないでしょう。そうしなければエアコンは稼働できず、サーバーはオーバーヒートを起こし、データ・センターを閉鎖することになりかねません47。
需給調整が可能な電源はどこから入手できるでしょうか。その一つは原子力です。しかし、それはますます希少になりつつあります。過去55年間で見ると、米国は建設した数よりも多くの原子力発電所を閉鎖してきました。エズラ・クライン氏とデレック・トンプソン氏が書いているように、「これは民間市場が責任を持ってリスクを負担しなかったためではなく、連邦政府がリスクを適切に評価しなかったためです」48。
いずれにしても、現在の原子力発電はもはや不気味な冷却塔を備えた旧式の大規模な発電所ではありません。中小型炉(SMR)は旧式の原子力発電所とは異なるものです。建設コストは安く、より安全な稼働が可能で、どこにでも設置できます。
中国も黙って見ていません。同国は100ギガワットの原子力発電所を建設中ですが、完成すると世界全体の原子力発電の半分を供給することになります49。中国がそうした方向に進んでいるのはなぜでしょうか。脱炭素化が将来の産業を掌握する手段になると考えているためです。
例として中国の大手電気自動車メーカーであり、今や世界の大手EV企業でもあるBYDを見てみましょう。同社は来年、完全自動運転機能を搭載した車を昨年のモデルと同価格で投入することを計画しています50。同社は既にわずか1万米ドルでEVを販売しています。これは米国や欧州のどの自動車メーカーも太刀打ちできない価格です。中国は5年以内に内燃エンジンから完全に撤退するとみられます。それは単なる環境上の理由からだけではありません。その目的は、ガソリンが不要で、世界諸国の競合他社の3分の1の価格で提供する、自動運転・バッテリー駆動車の世界市場を独占することです。
発電と送電、そしてそれらを建設する電気技師やエンジニアたちに大型投資を行わなければ、人間と機械のどちらに電力を供給するかという受け入れ難いトレードオフに直面することになりかねません。サーバーを冷却する方を選択し、人間はうだるような暑さや凍えに耐えるような社会は根本的に優先順位を誤っています。
図表3.1:51

国の富とエネルギー消費量の間には興味深い関係があります。両者はほぼ完璧に相関しており、エネルギー消費量が多い国ほど裕福です。しかし、ある時点でこの関係は失われるとされてきました。一般的に経済的に豊かになるにつれて、経済成長は持続しますが、効率性向上によってエネルギー消費の増加分は減少します。ところが現状はもはやそうではありません。最も裕福な国でさえ、繁栄するということは、再びより多くのエネルギーを生産、消費する能力と、またそうしたいという意欲によって定義づけられています。
欧州の見通しを強気に戻すべきか
ブラックロックは米国で創業し、最初のお客様は日本からでしたが、ブラックロックを真のグローバル企業へと成長させたのは欧州でした。
2006年にロンドンを拠点とするメリルリンチの資産運用事業を買収したことによって、世界最大級の資産運用会社への道を歩み始めました。今日、ブラックロックは欧州のお客様のために2.7兆米ドルを運用しており、その中には数百万人を支える約500の年金基金が含まれます。
この10年間、欧州の経済見通しは一貫して悲観的でした。低い成長率、市場の低迷、厄介な規制が大きく報道されていました。前イタリア首相で欧州中央銀行元総裁のマリオ・ドラギ氏は、欧州は欧州域外の国々との貿易障壁を引き下げたが、EU加盟国間の障壁は引き下げていないと最近指摘しています。ドラギ氏は、国際通貨基金(IMF)の分析を強調し、その分析は衝撃的な事実を明らかにしています。ドイツ企業にとって、近隣のフランスよりも中国で事業を行う方が魅力的である可能性があるのです52。
しかし、私は欧州が目覚めつつあると考えています。私が話をしている政策当局者(多くの人と話をします)は規制上の障壁が自然に消滅するものではないことを理解しています。これらの障壁は対処の必要があります。そして、対応することによって、莫大なメリットがあると考えています。IMFによると、EU域内の貿易障壁を米国の州間の水準まで引き下げると、欧州の生産性は7%近く向上し、経済規模は1.3兆米ドルの増加と驚異的に拡大する可能性があります。これはアイルランドとスウェーデンをそれぞれもう一つ創出できるだけの経済規模です53。
ブラックロックは米国で創業し、最初のお客様は日本からでしたが、ブラックロックを真のグローバル企業へと成長させたのは欧州でした。
それだけではありません、欧州の人口動態の時限爆弾は、人工知能の力によって起爆を免れるかもしれません。
欧州経済の最も大きな課題は、労働人口の高齢化です。EU加盟国27カ国のうち22カ国で、労働人口はすでに減少しています54。経済成長は国の労働人口の規模に大きく依存するため、欧州は長期にわたる経済の衰退に直面しています。先ごろ、欧州委員会自ら、労働人口が増加するか、生産性が向上するか、あるいはその両方が実現しない限り、欧州が持続的な成長を維持することは不可能だと警告しました55。
図表3.2:56

ここにおいてこそ、AIが重要な役割を果たす可能性があります。製造業や肉体労働に大きく依存する経済では、AIはあまり大きな効果を発揮しません。一方、サービスを基盤とする経済ではAIを使って作業を効果的に自動化し、生産性を大きく向上させられる可能性があります。
AIが仕事を奪うことに対する危惧はあり、その懸念はもっともです。しかし、人口高齢化に伴い、労働人口の減少という避けられない事態に直面している富裕国では、AIは脅威になるよりも、むしろ命綱になるかもしれません。
ビットコインは米ドルの準備通貨としての地位に食い込むのか
米ドルが何十年にもわたって世界の準備通貨の役割を果たしていることは米国に恩恵をもたらしています。しかし、それが永遠に続くという保証はありません。
国家債務は1989年にタイムズ・スクエアの借金時計が動き始めてから、GDPの3倍のペースで増加しています57。今年の利払いは9,520億米ドルを突破し、国防費を上回る見込みです。2030年までに義務的政府支出と債務返済額で連邦政府歳入をすべて使い果たし、そうなれば赤字は永遠に続くものとなります58。
米国が債務を制御できず、赤字が膨らみ続けた場合、世界の準備通貨としての米ドルの地位はビットコインのようなデジタル資産に奪われる恐れがあります。
図表3.3:59

私がデジタル資産の反対派でないことは明言できるのですが(次章をご覧ください)、2通りの状況が同時に発生する可能性があります。分散型金融(DeFi)は普通のイノベーションではありません。それは市場の取引を迅速化してより低コストで行えるようにし、透明性を向上させます。しかし、ビットコインが米ドルよりも安全な資産として投資家の目に映るようになると、このイノベーションは米国の経済的優位性を損なう可能性があります。
トークン化は民主化
今の世の中でお金のやり取りに使われている仕組みは、取引がまだ大声で口頭で行われていた時代、ファックスですら革新的だった時代に作られたものです。
例えば、SWIFTと呼ばれるシステムは毎日世界的に使用され、何兆米ドルもの取引を支えています。その仕組みは、さながらリレー方式であり、銀行は送金指示をひとつひとつ処理し、各段階で入念な情報確認が行われます。1970年代のアナログの時代には市場が今よりもかなり小さく、日々の取引件数も限られていましたので、このようなリレー方式は妥当なものでした。しかし、今の世の中でSWIFTに依存することは、電子メールをわざわざ郵便で送るようなものです。
トークン化は、この状況を大きく変えます。SWIFTが郵便サービスであるとすれば、トークン化は電子メールであり、資産の移動は仲介者の手を通さずに直接的に即時に行われます。
トークン化とは、いったい何でしょうか。株式、債券、不動産といった実世界の資産をデジタルのトークンに変換することがトークン化であり、トークンはオンラインで取引できます。ひとつひとつのトークンは個別の資産の所有権を証明するものであり、デジタル証書と言ってもよいでしょう。従来の紙による証明書とは異なり、トークンはセキュリティが確保されたブロックチェーン上に存在しているため、即時の売買が可能であり、煩雑な事務作業や待ち時間を必要とせずに移管することができます。
あらゆる株式、あらゆる債券、要するにあらゆる資産が、トークン化可能です。トークン化が行われれば、投資の世界は一変します。
あらゆる株式、あらゆる債券、要するにあらゆる資産が、トークン化可能です。トークン化が行われれば、投資の世界は一変します。市場は閉場する必要がなくなりますし、現在数日かかっている取引は数秒で決済されるようになります。現在では決済待ちで数日間滞留される資金が数十億米ドルに上りますが、その資金を瞬時に経済に還流させることが可能になり、一層の経済成長が創出されます。
アクセスを民主化できます。 トークン化によって、どのような資産でも分けて所有することができます。つまり、資産を無限に小さく切り分けることができるのです。これは、非公開不動産やプライベート・エクイティなどのこれまで投資対象としてアクセスできなかった資産に投資することを可能にし、その障壁を取り払うことができます。
株主の議決権行使を民主化できます。 株式を所有している場合、その会社の株主総会での議案に対し投票し、議決権を行使する権利があります。トークン化により、所有権と議決権がデジタルで管理されるため、どこにいてもシームレスにかつ人に見られず、議決権を行使できるようになります。
利回りを民主化できます。 一部の投資は他よりもはるかに高いリターンをもたらしますが、大口の投資家しかそのような案件に投資できない場合があります。その理由として、あらゆる軋轢、法的な、また運営上の問題、そして官僚主義などがあります。トークン化はそれを取り除き、より多くの人がより高いリターンを得られる可能性をもたらします。
トークン化ファンドが投資家にとってETFと同じくらい身近なものになる日がいつかやって来ると私は予想していますが、ひとつ重要な問題が残されています。 それは本人確認です。
金融取引には厳密な本人認証が要求されています。Apple Payやクレジット・カードは、1日当たり数十億件の本人確認を手際よく処理しています。NYSEやMarketAxessといった取引市場も、証券の売買で同じような処理をこなしています。しかし、トークン化された資産はそういう従来の経路を経由しませんので、新たなデジタル本人認証のシステムが必要となります。これは複雑なことに思われますが、世界最多の人口を抱えるインドはこれを成し遂げています。現在、インド国民の90%以上は、スマートフォンを使って直接安全に取引の認証を行うことができます60。
ここで学ぶべきことは明らかです。効率的でアクセスしやすい金融システムを真剣に作りたいのであれば、トークン化を推進するだけでは十分ではなく、デジタル認証の問題も解決する必要があります。
拡大する価値があるもの
ジョナサンズ・コーヒーハウスがロンドンの活気ある金融活動の中心地となって約80年が経過した1761年に、裕福なトレーダー150人のグループがその門戸を閉じようとしました。
このグループは、主要な取引時間帯に取引スペースを独占的に使用するために、当時の平均的労働者の10年分の賃金に相当する1,200ポンドを毎年支払うことをジョナサンズのオーナーに申し入れました。 その目的は要するに、非公開の市場を作ることでした。
しかし、ロンドンの投資家コミュニティーは、受け入れませんでした。抗議活動を行い、裁判所でも主張を展開し、2年後には勝利を手にしました。公開市場は維持され、すべての人が投資を続けることができました61。
現代の私たちの目には、金融の歴史は民主化に向かう長い着実な歩みのように見えます。投資家数は増加し、投資家の裾野は広がり、繁栄は拡大してきたように見えますし、この理解は概ね正しいと言えます。しかし、民主化が保証されたものであったことはありませんし、今も保証されてはいません。
市場は、全員に等しく開かれたものへと自然に進化するものではないでしょう。その過程には、飽くなき努力、意識的な選択、絶え間のない警戒が必要であり、それは数世紀前のコーヒーハウスを巡る抗議活動の頃から変わっておらず、現代でも退職資金に関する政策、トークン化、インフラ投資、人工知能を巡って複雑な議論が進行しています。
これは容易なことではありませんが、ブラックロックでは、お客様のフィデューシャリーとして37年にわたって関わってきました。その間、私たちのあらゆる努力に価値を感じない日は1日もありませんでした。なぜなら、人類がこれまでに築き上げてきた仕組みの中で、資本市場ほど多くの人々に豊かさをもたらしてきたものはないからです。
人々が自分の蓄えを投資すると、それは50ギルダーのことも5万米ドルのこともあるでしょうが、そのお金は道路や学校、企業、革新的技術といった目に見える基盤へと姿を変えて経済に力を与え、その効果が富へと波及し、何百万人もが日々の支払いに関する心配から解放され、家族との生活を楽しむ時間を増やすことが可能になります。
常々言っていることですが、投資は希望を示す行動であり、将来が現在よりも良くなると信じていなければ、誰も長期的な投資をすることはありません。しかし、それだけではありません。投資は単なる希望を示す行動ではなく、希望を現実にする手段です。
それには守る価値があり、
拡大する価値があり、
民主化する価値があります。
2024年から2025年のブラックロックのパフォーマンスについて
2024-2025
ブラックロックは昨年秋に新規株式公開(IPO)25周年を祝いました。株式公開時、従業員はわずか650人で、株式の初値は14米ドルでした。お客様から託された1,650億米ドルの資金を主に債券関連資産で運用し、アラディンのテクノロジーを社外へ販売し始めたばかりでした。
現在、ブラックロックはお客様からお預かりした11.6兆米ドルの資金を運用し、アラディンによる年間収益は16億米ドルを超えています。現在の従業員数は約23,000人強、30カ国以上にオフィスを開設しています。ブラックロックの株価の2024年の終値は1株1,000米ドルを超えました。しかし、IPOから25年、創業から37年経っても、多くの意味でブラックロックのストーリーはまだ始まったばかりです。
2024年はブラックロックにとって節目の年となりました。お客様から新たに受託した資産は、過去最高の6,410億米ドルの純資金流入がありました。運用資産残高(AUM)は新たに1.5兆米ドルが追加され、過去最高の収益と営業収益を達成し、それに伴い株主の皆様に29%のトータル・リターンを提供しました。
ダイナミックな投資とリスク選好が高まる環境の中、お客様は再び積極的に市場に参入することを希望されました。そしてそれをブラックロックに託していただきました。四半期ごとの純資金流入は連続して記録的な数値となり、10-12月期の純資金流入額は2,810億米ドル、ベース・フィーは7%のオーガニックグロースを達成して1年を終えました。重要な点は、このオーガニックグロースが機関投資家、富裕層向け両方、そして幅広くわたっていることです。お客様は商業的な野心とポートフォリオの目標の達成に向けて、長期にわたって関係を持つパートナーに、より多くのポートフォリオを集約することを希望されています。パブリック市場とプライベート市場を途切れなく統合し、データ、リスク・マネジメント、テクノロジーに支えられたダイナミックなポートフォリオを望まれています。
お客様のこうした歴史的な活動は、ブラックロックが15年以上前にBGIを買収して以来、最も重要な買収を実行した際に垣間見られました。GIPとプレキンの買収取引の完了と今年後半に予定されているHPSの買収により、当社のプライベート市場への投資とデータ提供の体制は拡大し、強化されることが予想されます。
お客様は常にブラックロックの戦略の中心にあり、私たちはお客様のあらゆるニーズにお応えするための投資を行ってきました。ブラックロックはパブリック、プライベートの両市場にわたって完全に統合され、そして差別化された資産運用とフィンテックのプラットフォームを構築しました。
予定されているHPSの買収が完了した際には、ブラックロックのオルタナティブ・プラットフォームは、お客様からの受託残高が6千億米ドル、年間収益が30億米ドル超となり、お客様向けプロバイダー上位5位以内にランクされる見込みです。このプラットフォームは、既に世界トップのETFビジネス、3兆米ドルの債券運用、7千億米ドルの保険資産運用業務、業界トップのアドバイザリー・サービス、実績のあるアラディン・テクノロジーなどを擁するブラックロックのプラットフォームに統合される予定です。
アラディンは、eFrontと最近買収したプレキンと共に、パブリック市場とプライベート市場の両市場にわたるポートフォリオのエコシステム全体の原動力となっています。拡大するこのプラットフォームと共にブラックロックのビジネスは進化し、お客様のニーズに対応して、現在は20%を超える収益基盤を長期の、市場に影響を受けにくい商品とサービスが占めるようになっています。プライベート市場、テクノロジー、カスタマイズ・ソリューションの長期的成長加速に伴い、収益構成は今後も引き続き有機的に変化していきます。これはより高く持続的なオーガニックグロース、市場サイクルを通じたレジリエンスの強化、長期的な株主価値の向上につながると考えています。
お客様にはブラックロックの戦略を支持していただいてきました。企業買収と統合の成功実績を積む中で、お客様とブラックロックの関係は深まっています。ブラックロックのETFビジネスは、純資金流入額が3,900億米ドルと過去最高を記録し、再び業界首位となりました。iSharesの買収以来、ブラックロックは、債券や暗号通貨などの新しい資産クラスとともに、流動性と透明性が比較的高いビークルのアクティブ運用戦略など、革新的な投資商品を提供することによってETF市場の拡大をリードしてきました。
ETFの純資金流入額の約4分の1を、この5年間に発売された商品が占めました。2024年にはアクティブETFに220億米ドルの純資金流入があり、歴史上最大の上場取引型金融商品となったブラックロックのビットコインETPは1年足らずで運用資産残高が500億米ドルを超えました。ETF業界全体では、この商品は資金流入額でS&P 500インデックス・ファンドに次ぐ第3位となりました。ブラックロックは商品とポートフォリオのレベルでイノベーションを起こしており、差別化された投資ソリューションを提供する販売能力を加速度的に高めています。
お客様のニーズが業界再編の原動力となっている中、投資家の皆様は、スケールの大きなマルチアセット・プロバイダーとしての実績を持つ、ブラックロックとのお取引をますます選んでくださっています。こうした状況は、ウェルス・チャネルにおいても同様です。ウェルス・マネージャーが業務を拡大し、お客様により良いサービスを提供するために主要な手段としてモデル・ポートフォリオを導入していています。ブラックロックはマルチアセット、マルチプロダクトの強みを生かした業界をリードするビジネスモデルを展開しています。また、カスタマイズした個人別管理口座(SMA)などを通じて、ファイナンシャル・アドバイザー・パートナーズとそのお客様にこれまで以上に個々のニーズに合った商品を提供するため、ウェルス・プラットフォーム全体で取り組んでいます。当社はアペリオを通じてインデックス型のSMAを提供しており、2024年には140億米ドルの純流入を記録し、4年連続で過去最高を更新しました。また昨年は、税制優遇があるオプション・オーバーレイ戦略を提供するスパイダーロック・アドバイザーズを買収し、ウェルス・チャネルにおけるカスタマイズ商品のラインナップを拡充しました。
こうしたお客様には世界最大規模のアセット・オーナー、年金基金、企業などが含まれ、ブラックロックとのつながりを深めていただいています。これらの企業パートナーの多くは、ブラックロックとの関係拡大が自社の中核事業や株主にプラスのネットワーク効果をもたらすと考えていらっしゃいます。今年、大型の外部委託マンデートとして、お客様からの受託額は1,200億米ドルを超えました。
差別化されたアドバイスと、アクティブ運用戦略のアルファ創出能力をお客様に評価いただき、2024年はアクティブ戦略に600億米ドルを超える純資金流入がありました。このアクティブ運用資金の流入を牽引したのは、当社のLifePathターゲット・デート・ファンドへの加入、OCIOのサービス(アウトソースド・チーフ・インベストメント・オフィサー)の提供、テクノロジーとデータを駆使した体系的なアクティブ株式戦略でした。 ブラックロックは長期的な投資実績を達成しており、よりダイナミックな資産配分のアプローチが求められる環境下でアクティブ戦略は優位性を発揮すると考えています。
債券については、ブラックロックは見通しの難しい金利環境での舵取りをお客様から託され、昨年は1,640億米ドルの純資金流入がありました。お客様の中にはリタイアメントのための資金など、長期的な目標を達成するために現在マネー・マーケット口座で得られる4%を超える利回りを求められる方が多いため、10兆米ドルと記録的な金額に積み上がった待機資金を再配分する絶好の機会であると考えています。
ブラックロックのお客様は分散化の手段として、また相関性の低いアルファ創出の可能性の源泉として、引き続きプライベート市場への配分を増やしています。プライベート市場には90億米ドルの純資金流入がありましたが、これはインフラストラクチャーとプライベート・クレジット戦略の旺盛な需要を反映しています。先ごろのGIPの買収とHPSの買収計画に対するお客様の反応は弊社の高い期待さえをも上回る良好なもので、これらが2025年以降の純資金流入と収益成長を力強く牽引する原動力になると予想しています。
ブラックロックがお客様へアラディンのテクノロジーの提供を開始してから25年あまり経ちますが、このサービスを開始するに当たり、社外へ提供すべきかどうか社内で活発な議論が行われました。結果として、サービスの提供を決めたのはブラックロックにとっても、お客様にとっても正しい判断でした。当初、社内のリスク・マネジメントのツールとして他社に先駆けて開発したテクノロジーが、今や業界で最も包括的で、完全に統合されたオペレーティング・システムとなり、16億米ドルの年間収益を創出しています。
2024年にアラディン史上、いくつかの最も重要なマンデートの一部を締結し、お客様には複数の機能をご利用いただいており、これはアラディンの売り上げの半分以上を占めています。今年初めに完了したプレキンの買収によって、透明性の向上、ひいてはプライベート市場へのアクセスを高めることを目的として、プライベート市場に関するデータ能力が新たに商品・サービスに追加されます。
この記録的な成果は、ブラックロックとお客様との繋がりからもたらされたものであり、プラットフォーム全体でより一層包括的なサービスの提供に努めています。ETF、アラディン、アウトソーシング、債券といった構造的成長が見込まれるビジネスは、お客様にサービスを提供し、サイクルを通じたベース・フィーの5%のオーガニックグロースの目標を達成するための強固な基盤です。また、プライベート市場やデータ分野における戦略的な動きと組み合わせながら、資産運用の未来を決定付けると思われるビジネスチャンスを先取りする体制を構築しています。
次なる成長局面への前進
成長戦略を評価する継続的な取り組みの一環として、ブラックロックの経営陣と取締役会は1年を通じて、業界とお客様の投資機会の将来のイメージを評価することに時間を費やしています。例えば、今から5年後の2030年にどのような投資機会が差別化された成長を牽引するでしょうか。お客様は将来のポートフォリオの資産配分とアルファ創出にどのように取り組まれるでしょうか。
将来の投資は、多様な資産クラス全体の統合が加速し、デジタル化が更に進むと考えています。お客様は既にそれを実践しています。パブリックとプライベートの投資、アクティブ運用とインデックス運用を組み合わせ、これらすべてを一括して、優れたデータとアナリティクスを使ってポートフォリオをより詳細に把握することを目指しています。ブラックロックは変化する新たな資産運用の最先端でお客様に効果的にサービスを提供するため、ポートフォリオ全体に商品とテクノロジーの能力を拡大しています。
ブラックロックが15年前にBGIを買収した時、アクティブ運用とインデックス運用を組み合わせる動きは業界で初めてでした。今日では、成果指向のポートフォリオに広範な市場へのエクスポージャーを組み合わせることは業界標準となっています。昨年の当社の買収の動きは、お客様のためにパブリック投資とプライベート投資を結び付けることによって、過去にBGIを買収した時と同じことを行おうとするものです。GIPを通じて、またまもなくHPSを通じて、インフラストラクチャーとプライベート・クレジットの大型プラットフォームをパブリック市場プラットフォームのグローバルな機能に統合します。また先ごろ買収取引を完了したプレキンをアラディンとeFrontに統合することにより、プライベート市場に関する標準化され、透明性の高いデータをお客様に提供できるようになります。
ETFは、株式市場に初めて参入する個人投資家から世界最大規模のアセット・オーナーに至るまで、あらゆる投資家の皆様の投資へのアクセスを促進する実証済みのテクノロジーです。その効果は既に皆さまご存じの通りです。最近発表されたブラックロックのビットコインETPの設定は、暗号通貨のエクスポージャーを提供する一方で、上場取引型金融商品の一括運用の効率性と価格発見機能を提供する直近の例の一つに過ぎません。このETPは、より多くの投資家の皆様にブラックロックの存在感を広めることにも役立っています。ブラックロックのビットコインETPの需要の半分以上は個人投資家によるものですが、この投資家の4分の3はこのETPに出会うまでiSharesの商品を購入したことがなかった人々です。そして今年はビットコインの上場取引商品をカナダと欧州で設定し、ビットコインへのアクセスをさらに拡大しました。
同様にETFは欧州における投資文化の成長を促進します。投資の初心者が資本市場に参加するとき、まずiSharesをはじめとするETFから始めることがよくあります。資本市場で投資を行っている人々の割合は、米国では60%を超えていますが、欧州ではまだ3分の1にとどまっています。広範な資本市場が提供する成長可能性に参加していないだけでなく、銀行の貯蓄口座の低い預金金利を超えるインフレが進行する中で、実質利益を逸失することもよくあります。欧州では既存企業のほかに新規参入の数社とも協力し(モンゾ、N26、レヴォルト、スケーラブル・キャピタル、トレード・リパブリック)、現地市場の投資への障壁を解消し、現地の市場における金融の知識を構築しています。運用資産が現在1兆米ドルを超えているブラックロックの欧州ETFプラットフォームは、それ以下の5社を合わせた資産を上回る規模を持ち、これによって地域のオファリングを拡大し、より多くの個人のお客様が資本市場を通じてファイナンスの目標を達成できるようサポートする大きな機会が生じると考えています。
また、各国が自国内の資本市場の育成を目指す中で、将来の成長を実現するための基盤作りも進めています。私は今年既に中東とアジアを訪問しましたが、その際に現地のリーダーと、いかにしてより堅牢な現地の資本市場を開発し、発展させてゆくかについて多くを語り合いました。サウジアラビアでは、パブリック・インベストメント・ファンドと提携して投資を奨励し、現地資本市場の開発を進めています。インドでは、合弁会社ジオ ブラックロックを通じてリライアンスと共同で、デジタルに対応した資産運用とウェルス・プラットフォームの立ち上げ準備をしています。
ブラックロックのIPOから2024年12月31日までの年間複利トータル・リターン
上場25周年を祝うとともに、株主の皆様に突出したリターンを達成できたことを誇りに思っています。1999年のIPO以来、S&P 500のトータル・リターンが8%、金融業界全体では6%にとどまる中で、ブラックロックは年率21%のトータル・リターンを創出してきました。ブラックロックの大胆な戦略と連携のとれた組織的な投資こそが、お客様との深いつながりと株主の皆様への卓越したリターンを可能にしています。

出所:S&Pグローバル、2024年12月31日現在。パフォーマンスのグラフは必ずしも将来の投資パフォーマンスを示唆するものではありません。
ブラックロックの世界トップクラスの人材は、数十年に及ぶ成長と持続的なパフォーマンスの中心的な役割を果たしています。ブラックロックでは人材戦略を定期的に見直し、あらゆるビジネスに幅広い経験を持つ、多才なリーダーの育成に努めています。今年初めに全社でリーダー数名を新たな役職に昇格させました。
ブラックロックで20年にわたり数々のビジネスの育成に携わったマーク・ウィードマンは、次の段階として外部でのキャリアを追求することを決断しました。同氏は、iShares、企業戦略、直近ではグローバル・クライアント・ビジネスを主導する任務など、今日のブラックロックの形成に貢献しました。マークは私の大切な友人であり、会社への貢献を個人的に感謝しています。
私は、ブラックロックが構築した、人材豊富なリーダーシップ・チームを誇りに思っています。また先ごろの買収や予定されている買収に伴い、最高の人材がブラックロックに加わります。ブラックロックでは、プラットフォーム全体で従業員がお客様に価値を提供し、将来に向けてビジネスを牽引できるような人材配置を行っています。
取締役会
ブラックロックの取締役会は、会社の成功と成長を実現する上で常に重要な役割を果たしています。また、将来の戦略を策定し、新しい市場や事業に進出する際の支援も行います。
私たちは毎年、取締役会の構成を見直し、ブラックロックの事業運営、戦略、経営について助言を行うのに適した十分な経歴と経験が備わったメンバーを確保しています。GIP買収取引完了後、昨年秋にバヨ・オグンレシを取締役会に迎え入れたことを喜ばしく思っています。急成長するプライベート市場で能力拡大を目指す中、プライベート市場における同氏の豊富な経験は既にブラックロックに恩恵をもたらしています。
本年3月、当社の取締役会は、ロックフェラー・キャピタル・マネジメントのCEOグレゴリー・フレミングと、フィデリティ・インベストメンツのパーソナル・インベスティング部門の元社長のキャスリーン・マーフィーを、年次総会の選挙に推薦することを全会一致で決議しました。グレッグとキャシーは、金融サービスおよび資産運用の分野で非常に豊富な経験を有しており、当取締役会に卓越した見解をもたらしてくれるものと確信しています。
同時に、今年の取締役再選に臨まないマルコ・アントニオ・スリム・ドミットをブラックロックの取締役として迎えられたことも幸運でした。トニーの取締役としての功績は、地域を超えた投資経験を生かし、取締役会の意思決定、ひいてはブラックロックそのものを改善する鋭い洞察力を提供してくれたことにあります。私たちは彼の貢献に感謝しており、取締役会全員とブラックロックのリーダーシップ・チームから惜しまれることでしょう。
取締役会は、お客様、従業員、株主の皆様により良いサービスを提供することを目標のすべてとして、引き続きブラックロックの投資とイノベーションの指針を示していきます。
ブラックロックが株式を公開した時、私たちは資本市場の成長の重要性とその奥深さを確信していました。私たちの成功を、従業員を含め、将来のために投資する幅広い人々と共有したいと考えました。それは今も全く変わっていません。2025年に入り、私たちはこれまでにない大きな転換点を迎えていますが、ブラックロック、お客様、株主の皆様にかつてないほど大きな投資機会が到来すると私は考えています。
真心を込めて
ローレンス フィンク
会長 兼 CEO
1. The World’s First Stock Exchange(コロンビア大学出版、2014年)の著者、Lodewijk Petram博士に対し、アムステルダムの最初の投資家の職業リストのオランダ語原本 Het oudste aandeelhoudersregister van de Kamer Amsterdam der Oost-Indische Compagnie, edited by J.G. van Dillen(The Hague: Nijhoff, 1958年)を探してくださったことを含め、初期の株式市場の歴史研究をご支援いただいたことに深く感謝申し上げます。
2. R. C. Michie, The London Stock Exchange: A History(オックスフォード:オックスフォード大学出版、1999年)
3. The First Measured Century: An Illustrated Guide to Trends in America, 1900-2000、第14章
4. The Federal Reserve、Survey of Consumer Finances, 1989-2022(2022年) 注記:直接および間接的な株主を含みます。
6. 表1.1. 出典 ファクトセット、世界銀行。2023年12月31日時点のデータ。S&P 500のリターンは、全配当の再投資を前提。パフォーマンス・グラフは必ずしも将来の投資パフォーマンスを示すものではありません。
7. 出所:ICIおよび米連邦準備制度理事会(FRB)。マネー・マーケット・ファンド(MMF)と商業銀行口座の資金、3月5日現在。
8. Lodewijk Petram、The World's First Stock Exchange(ニューヨーク、コロンビア大学出版、2014年)。
10. リッチモンド連邦準備銀行、When Interstates Paved the Way(2021年)、注記:米連邦道路管理局(FHWA)の調査より。
11. グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(gihub.org)、デロイト。インフラ需要は新規投資、更新投資、および投資によって資産の耐用年数が大幅に伸びる場合のメンテナンス支出と定義され、土地の取得費用は含まれません。需要は、各国のパフォーマンスが、インフラ投資に割くリソースの観点から最も優れた他国と同程度であるとの前提に基づいて決定されています。2024年から2040年の投資需要を算出しています。
12. この計算は、実質ベースで調整した過去のコストの概算推定値に基づいています。米国土木学会によれば、米国の州間幹線道路網の総コストは推定約5,000億米ドルです。History.comによれば、大陸横断鉄道のコストは現在の米ドルの価値に換算すると約12億米ドルと推定されます。世界の推定インフラ投資ニーズを満たすためには、これら2つのプロジェクトを合わせた支出(約5,012億米ドル)を今後15年間で135.67回繰り返す必要があります。15年間は780週間であるため、これらのプロジェクトを約6週間ごとに1回完了するのに等しい計算になります。これらの数値は過去のデータに基づく概算値であり、正確な投資ニーズよりもむしろ世界のインフラ需要の規模を例示するためのものです。
13. 図表 2:1. 出典 グローバル・インフラ・ハブ、2024年時点
14. BlackRock Investment Institute、Thunder Said Energy。2024年11月。コストの推定値にはデータセンターの3つの構成要素すべてが含まれます。データセンターのインフラ費用はインフラの構築全体に関する費用であり、チップやサーバーの費用は含まれません。電力の供給コストは、データセンターへの電力供給に必要な設備の建設に関する費用です。
15. 図表2.2. 出典 S&P Capital IQ、ブラックロック。2025年2月24日現在。格付を含む、いかなる情報、データまたは資料(以下「コンテンツ」)の複製はいかなる形態によるものも、関係当事者の書面による事前の許可がない限り禁じられています。かかる当事者、その関連会社およびサプライヤー(以下「コンテンツ・プロバイダー」)はいかなるコンテンツの正確性、妥当性、完全性、適時性または利用可能性を保証するものではなく、原因またはかかるコンテンツの使用により得られた結果にかかわらず、いかなる誤りもしくは脱漏(過失またはそれ以外)に対しても責任を負わないものとします。コンテンツ・プロバイダーはいかなる場合も、当該コンテンツの使用に関連した損害、コスト、費用、弁護士費用、または損失(逸失収入または逸失利益、および損失機会を含む)に対して責任を負わないものとします。当該コンテンツに含まれる特定の投資または有価証券、格付もしくは投資に関する所見についての言及はかかる投資または有価証券の売買または保有の推奨ではなく、投資または有価証券の適合性を表明するものではなく、投資の助言として依拠することはできません。信用格付は意見の表明であり、事実の表明ではありません。
16. プライベート・クレジットのAUMとBDCのAUMについては、プレキンとクリフウォーターの分析に基づきブラックロックが推計(2024年6月現在)。
17. MorningstarおよびPreqin(2008年10月から2024年9月のデータに基づく)。Preqin Indexのリターン・データをブラックロックが非平滑化したものです。過去の運用実績は現在または将来のリターンを示唆するものではありません。
18. MorningstarおよびPreqin(2008年10月から2024年9月のデータに基づく)。Preqin Indexのリターン・データをブラックロックが非平滑化したものです。過去の運用実績は現在または将来のリターンを示唆するものではありません。
19. MorningstarおよびPreqin(2008年10月から2024年9月のデータに基づく)。Preqin Indexのリターン・データをブラックロックが非平滑化したものです。過去の運用実績は現在または将来のリターンを示唆するものではありません。
20. ブラックロック、BlackRock Agrees to Acquire Barclays Global Investors, Including its Market-Leading(2009年)
21. ブラックロック、2024年12月31日現在。累積的なコスト削減額は、2015年から2024年12月31日までの従来ファンドの経費率と新規ファンドの経費率の差に、ファンド削減時におけるファンドの運用資産額を乗じて算出しています。この手法では、時間と共に増加する複利のコスト削減効果は考慮していません。
22. CNBC Television、Nvidia CEO Huang: Our Country Should Invest in AI and Apply Regulations Where It Makes Sense, interview by Jim Cramer, Mad Money, CNBC(2025年)
24. 43のターミナル全体の総取扱量と、世界の推定コンテナ取扱量(8億6,540万TEU)に基づく市場シェア。出所:Drewry(2023年)
25. フィナンシャル・タイムズ、How Abebayo Ogunlesi’s contrarian bet led to $12.5bn BlackRock tie-up(2024年)
26. Edwin Amenta、When Movements Matter: The Townsend Plan and the Rise of Social Security(プリンストン大学出版局、2008年)
27. 米国国勢調査局、Poverty in the United States: 2022(2023年)
29. 退職を再定義 – それが私たち全員の仕事、ブラックロック2025年調査
30. 2021年12月31現在のAUM(運用資産残高)に基づくBLKの推定および2020年現在のCerulliのデータ。ETF資産にはCerulliのデータに基づく適格資産のみが含まれ、機関が保有するETFの9.5%は年金や退職金に関連すると仮定。機関の推定は、「退職に関連する」と定義された資産を含み、特定のリタイアメント・マンデート(例:LifePath、年金)を通じた商品や顧客に基づく。LatAm年金基金の顧客向け運用資産(現金を除く)に基づくLatAmに関する推定。
31. Equable Institute’s Annual Report, State of Pensions 2024, (2024)
32. 退職を再定義 – それが私たち全員の仕事、ブラックロック2025年調査
33. ソーシャル・セキュリティ、When to Start Receiving Retirement Benefits(2023年)、p. 2
34. 退職を再定義 – それが私たち全員の仕事、ブラックロック2025年調査
35. ブラックロック、Emergency Saving Initiative: Impact and Learnings Report(2019~2022年)、p. 2
37. 超党派政策センター、Workplace Emergency Savings Policy: Where We Are and What Comes Next(2024年)
38. 米国中小企業庁アドボカシー室、Small Business Economic Profile US(2023年)注記:6,160万人の中小企業従業員が米国従業員の45.9%を占める。2. ボストン大学退職研究センター、Small Business Retirement Plans: The Importance of Employer Perceptions of Benefits and Costs(2023年)
39. 退職を再定義 – それが私たち全員の仕事、ブラックロック2025年調査
40. BlackRock, Alternative investments in target date funds, (2022)
41. 「9年間前倒し」という主張は、ブラックロックのLifePath支出アルゴリズムを使用し、以下の前提に基づき算出しました。個人が25歳から貯蓄を始め、変動を伴いながら増えていく給与(当初は5万米ドル、年率1.14%で増加)の9%を40年にわたり一貫して拠出し、2種類の資産(株式と債券)で構成される単純なポートフォリオに投資します。この期間全体を通じてネット報酬ベースで年率50ベーシスポイント(0.50%)のアウトパフォーム(アルファ)を実現した場合、このポートフォリオの資産額は、引退年齢(65歳)までに、このアルファがない類似のポートフォリオを累積で約14.5%上回る計算になります。LifePath®の支出計算は株式40%、債券60%という保守的な退職ポートフォリオ・アロケーションを前提としており、他の条件が同一の場合、このアルファの上乗せによって引退生活の費用を9年分追加で賄えることになります。
43. シティリサーチ、Overcoming Gridlock: Powering Our Future(2024年)、p. 32
44. Ezra Klein氏とDerek Thompson氏、Abundance(Avid Reader Press、2025年)
45. Hawaii Public Utilities Commission, 2023 Adequacy of Supply Report Summary, (2023)
46. ウォールストリート・ジャーナル、‘Three New York Cities’ Worth of Power: AI Is Stressing the Grid(2024年)
47. ゴールドマン・サックス、Generational growth: AI, data centers and the coming US power demand surge(2024年)
48. Ezra Klein氏とDerek Thompson氏、Abundance(Avid Reader Press, 2025年)
49. フォーブス、China To Build The First Small Modular Nuclear Reactor – Of Course、(2021年)
54. 国際連合経済社会局、世界人口推計2024年改訂(2024年)
55. 欧州委員会、2024 Ageing Report: Economic & Budgetary Projections for the EU Member States (2022-2070)、p. 4
56. Figure 3.2. Source: United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2024)
57. 米国経済分析局、セントルイス連邦準備銀行、FREDで検索した国内総生産(2025年) 2. 米国財務省。財政サービス局、セントルイス連邦準備銀行のFREDで検索した民間部門の保有する米国連邦政府債務(2025年)
58. 米国議会予算局、The Budget and Economic Outlook: 2025 to 2035(2025年)
59. Figure 3.3. Source: Congressional Budget Office, 2025
60. Andreessen Horowitz、Why India Leads in Digital payments(2023年)
61. R. C. Michie、The London Stock Exchange: A History(オックスフォード大学出版、1999年)
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